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大学生の1/2未満であること、中学生は大学生に比べてLT以下のトレーニング量は少なく、LT以上の激しいトレーニング量が多いことが明らかにされている。
発育期の中長距離競走選手のトレーニングの内容の生理学的研究は少ない。この点で貴重な報告であり、上述の吉田たちの報告とともに、発育期のトレーニングの至適運動量を求めるうえでの基礎的資料となるものである。

心理学・社会学的論文

1 落合論文「大学生における過去の運動部活動と現在のスポーツ参加状況との関連について」

本報は、大学生を対象にして、過去の運動部経験有無や運動部活動のあり方を調査し、それが現在のスポーツ参加の有無や参加の形態にいかなる影響を与えているかを明らかにしようとしたものである。その結果、中学校・高等学校での運動部経験を持つことは、卒業後の組織的スポーツ参加に、それを促進する方向で作用していることが明らかになったという。また、卒業後の組織的スポーツ活動への参加やその形態は、過去の運動部活動の経験の有無や退部経験の有無ばかりでなく、経験してきた運動部活動への意識の違いによっても異なっており、その意識の違いは、1)プレーや実力の評価、2)楽しさ、3)チームとしての機能、4)指導者、5)周囲の評価、という観点から検討することが可能であるとしている。本報告は、スポーツ活動の継続という生涯スポーツの基本的課題に関わって、中・高等学校における運動部のあり方について重要な示唆を与えるものといえよう。

2 宮内論文「中学校・高等学校運動部の「望ましさ」に関する研究(2)」

本研究は、前報で明らかにした中・高校生の運動部の「望ましさ」の諸条件を、結果として評価し継承していると考えられる大学生についての調査を通して検証しようとするものであった。その結果・中学校運動部では「好きだから」という理由が運動部入部と継続の原動力になっており、また、「友情」「体力」「忍耐力」「自信」などの獲得が大切な要因になっていることが明らかにされたという。高等学校の運動部の「望ましさ」も基本的には中学校運動部と変わらないが、目標に「対外試合に勝つこと」という側面が強くなることと、「部員の自主性」を重視する傾向があることを報告している。前述の落合の報告と併せ考えると、現在の中・高校生が運動部に求めているものが、体力的・技術的なものだけではなく、心理的要素、社会性に関わる要素についても大きいと考えられる。このことは、学校運動部の望ましいあり方を論じるうえで非常に示唆に富むものと考えられる。

 

 

 

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